2005年03月27日
●お米ブルース。
母ちゃん?俺。忠雄だけど。
え、誰だって?知らねえ?そりゃひでえよ。今じゃ俺も心入れ替えてちゃんと定職ついてるしよ。あ、夢は諦めてねえよ。やっぱり最後はロックンローラーになりたいけどよ。俺も32だろ、さすがに現実も見ねえとまずいしよ。
何言ってるかわからねえ?母ちゃん、そりゃねえんじゃねえの?たしかに今まで迷惑ばっかかけたけどよ、借りた金だって返してねえけど、まあ見てろって。来年の今頃、俺、「笑っていいとも」に出るからよ。テレフォンショッキングよ。今流行りのビジュアル系から紹介されてロック仲間で回してよ。
えっ?今更ビジュアル系なんて言ってる奴いない?古い?あ、そう・・・・
んなことはどうでも良いのよ。
俺の今の仕事さ、ちょっと特殊なせいかなかなか相談に乗ってくれる人もいなくてよ、まあ、母ちゃんもわからないだろうけど、まあまあ、聞いてくれよ。
俺、今さ、芸能事務所に勤めててさ。アメリカ兄弟っていう、次世代演歌っていうテーマで頑張ってるコンビの付き人やってんだ。何が次世代って、演歌はもう日本のモンじゃなくてやっぱりこれからはグローバルっていうかさ、アメリカっていうの?
え、何言ってるかわかんない?やっぱり凡人にはわかんねえかな。最先端だからさ。母ちゃんみたいな馬鹿にはわかんねえかもしれねえな。
最先端のエンターテイメントってえの?わかる?えっ、わかんない?あ、そう・・・。
まあ、そういうわけでさ、世の中やっぱり母ちゃんみたいな人が多いんだけどこっちも商売だから一生懸命妥協点を見出そうと頑張ってんのよ。
で、とりあえずさ、今、次世代演歌の最先端行ってんのが、マツケンだと思うわけ。マ・ツ・ケ・ン。
で、俺らもトリビュートっていうの?カバーっていうの?頑張ろうってことになって今度新曲出るんだ。
お米ブルースって言うんだけどさ。
マツケンって言えば有名なドラマあるじゃん。そこから捻って「米」貰って、「サンバ」だとまんまだから「ブルース」にしてさ。この世界、著作権厳しいからさ、そうやって網の目くぐらねえとさ、やってけないわけよ。
なんだよ、その沈黙は。
言っとくけどパクリじゃねえから。
いや、ホントホント。マジで。強調しとくよ、ここは。俺達の名誉のために。
ところでさっきからノリが微妙なんだよな、母ちゃん。そんなに俺が煙てえのかよ。そんな態度されたら、俺が売れたとしても「隠したい過去」みたくするしか無くなっちゃうぜ。ここはやっぱり水に流してさ。
えっ?あれ?母ちゃんじゃねえのか?
安岡艶子。ツ・ヤ・コ!。母ちゃんだろ?
えっ?
サワダさん?
あ、そう・・・
すんません、間違えました。
ガチャン。
2005年03月21日
●アメリカとポトフ。
結局ギャラ渋られて、それじゃあ3人稚内から帰れねえって話になって貰うはずだった蟹返してその分金もらって在来線乗り継いでようやく東京まで帰ってきて、で、渋谷で飲んだ。3人で。
ノースアイランド師匠が「反省会やろう」って言い出したからだった。俺は一刻も早く帰りたかったがブリッジ師匠も乗り気だったので付き合うことにした。さすがの二人も稚内営業は失敗したと思っているのかもしれないと思っていたのだが・・・。
「売れねえのは何故か」という話になった。切り出したのはノースアイランド師匠だった。
「なんで売れねえんだろうな、兄貴。」 兄貴とはブリッジのことだ。
「インパクトがねえよ。」 ある意味インパクトはあると思うが。
「インパクトってなんだ?」
「ウリだよ、ウリ。売っていくための武器がねえってことだろ。」 わかってんじゃねえか。
「俺らを冷静に分析した場合、歌だって馬鹿みたく上手いわけでもねえ。曲だってそうだろ?」
「そんなことねえよ。俺達良い歌歌ってるよ。」 吾作が、か?
「おめえは本当に馬鹿だな。時代にあった歌を歌わなきゃいけねえってことだ。俺だって良い曲書いてるって自負はあるぜ。ただ、時代が追いついてねえ。」 時代のせいになった。
「時代かあ。」 違うって。
「しかし時代が追いつくのを待ってる場合じゃねえのよ。こっちから擦り寄っていかねえとな。」 擦り寄るのか。
「どうすんのさ、兄貴。」
「インパクトのあることをやればいい。とりあえず俺とお前でコンビを組む。コンビ組んで営業回るんだ。」
「いつも一緒に回ってんじゃん」 ごもっともな意見。
「コンビ名を考えるんだよ。インパクトのある奴を。」 歌手の発想じゃねえな。
「なるほど。」 納得すんな。
「これからの時代、日本の中だけでやってく時代じゃねえ。世界だよ。インターナショナルなわけよ。世界と言えば、アメリカよ。数年後には演歌が世界を救うのよ。これくらいの意気込みが無けりゃ駄目なのよ。」
「さすがあ。」 流石、じゃない。
「そこで、コンビ名だが、アメリカ兄弟ってのはどうだかな。」 嫌だよ。
「いいねえ!」 いいのかよ。
「でもさあ、この前稚内に行ったじゃん。そうすっとソ連が近いよね。」 ソ連、ですか。
「おうっ、二大大国だな。」 なんか話が変な方向に広がってきたな。
「ソ連にちなんで何か無いかな。」
「ソ連かあ。」 今はロシアですけどね。
「ソ連の有名な食べ物でポトフってあるよね。」
「ポトフ大統領!」
「兄貴、流石!!!」
ふざけんな!
「おう、クソ松。アメリカとポトフ、どっちがいい?」
そうそう。
稚内に行くあたりから俺は「クソ松」と呼ばれている。
こんな奴らから「クソ松」と呼ばれているのだ。
で、俺が「ポトフ」と言ったせいで、二人のコンビ名は「アメリカ兄弟」に落ち着いた。
だったら聞くんじゃねえよ。
●【改版】 稚内の片隅で色々と叫ぶ。
結局誰も話を聞いてくれないから日記を書くことにした。
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営業で稚内に来ている。稚内の片隅の公民館だ。
元はといえば、ウチの事務所に所属している別の歌手(結構有名)にオファーが来てそいつが断って、更に次が断って、徐々に徐々にランクが落ち最後誰でも良いからという話になって、幸夫と三郎に落ち着いた。一番下まで落ちてきたというわけだ。大した儲けにもならないが数週間ぶりのまともな仕事というわけで、幸夫も三郎も空回りしそうな気合の入れようだった。
で、空回りした。
「ふたりのビッグショー」と銘打たれた「リサイタル」は幸夫と三郎が交互に持ち歌を歌い、MCついでに相方を紹介するスタイルで延々2時間続いた。その場にいた客からすれば詐欺にあったようなものだったと思う。宣伝の回覧には写真も無く、ただデカデカと「夢の競演!あの幸夫と三郎がやってくる。」と書かれていただけだった。でやってきてみれば、どこぞの馬の骨が、聞いたことも無い歌と下ネタ満載のトークを繰り広げるわけで、久しぶりの娯楽に目を輝かせてやってきた彼らの純真な心も、ショーの始まりと共に地に落ちたのがわかった。
一曲目から三郎が叫ぶ「吾作」。続いて「祭りだわ」。
自信作だって言ってた。
尊敬する北島御大の「祭り」に、あみんの「待つわ」を大胆にフィーチャリングさせたとか。
そりゃパクリじゃねえのか。
見逃しがちだが「吾作」もだ。
その後、上気した顔と満足げな笑みと燃え上がるトーク。引きまくる客のコントラストも見事に幸夫登場。冷え切った場の空気も何処吹く風。満足げに歌い語り踊る。空気が読めないってのも重要な資質だと知る。読んだうえでこの態度なら衣笠もビックリの鉄人だ。
客の拷問が終わったら今度は俺の拷問だ。
終了間際、舞台袖を抜けて公民館の玄関で準備。下駄箱前に机を置いてのグッズ販売が俺の役目だ。冬の北海道でひとしきりテンションの下がったジジババ相手に、今まさに目の前でのうのうと歌っていたこの世の敵とも言うべき野郎どもが満面の笑みで中央に陣取ったTシャツを売るのだ。アンケートと共に。
メンチと文句と皮肉と無視のサンドバッグに早代わりの瞬間だ。さすがに慣れたけど。この頃。
2005年03月13日
●ノースアイランド・ブリッジ。
もしもし?
おう、久しぶり。前のバイトで一緒だった安岡だけど。
悪いな、こんな時間に。ちょっと相談ごとっていうか、聞いて欲しいことがあってさ・・・。
前にも言ったけど、俺、ロックやりたくて田舎から出てきたじゃん。だけどやっぱりなかなか芽が出なくてさ、別に諦めたわけじゃないけどもう32だしさすがにそれなりの仕事にはつかなきゃいけないなと思ったわけ。そんなとき某芸能事務所から求人が出てたから仕事もしつつ上手くいけば俺も、、、なんて思いながら応募してさ、けっこうすんなり入れたからこれは儲けモンだな、なんて思いながら年甲斐も無くウキウキしてたんだ。
4月1日から来いって言われて、まあ合格だって言われてから丁度一週間だから妥当な時期なのかななんて思う反面、行くなり「冗談でした。」なんていわれたらヘコむなあなんて思ってたんだ。俺、32だけど純だよな。
ん?なに?言い方古い?死語?へえ、そうなの・・・・。
まあ、そういうわけでさ、とりあえず入社した事実は嘘でもなかったんで一安心したんだけど、なんかヘンなもん掴まされたっていうか、演歌歌手の付き人やれって言われてさ、そんなこと言われてもわかんねえって思ったけど選択の余地も無いみたいだし、芸能界のウラ側ってえの?ちょっと興味あるし、まあなんとかなるかって思って返事したんだけどさ。なんて名前かって?何が?ああ、演歌歌手のことな。
ブリッジだよ。
ブリッジ 幸夫。
冗談みたいだろ。付き人始めてそれなりに経つけど今でも冗談なんじゃねえかって思ってるよ俺は。しかもセットで売り出してる、、、売り出してるって言い方は御幣があるな。だって出てねえし。表に。
セットで営業回ってるのがいてさ、こっちのがノースアイランド。
ノースアイランド 三郎。ね・・・。
あのさ・・・・・。
絶対ヤバいよな?
辞めたほうが良いよな・・・・。
あれ?もしもし?もしもし?もしもーし・・・・・・・・・・・。