2005年04月01日
●赤白黄色。
突然だが、俺の親父が信号屋を始めると言い出して丁度大学で就職活動していた俺も誘われた。信号屋って何のことかと思って聞き返すと、今、日本のそこかしこで見かける信号製造は一社独占の状態らしい。それって日本たばこみたいなイメージで、後発が太刀打ちできるような状況じゃないっていうか、そもそも参入すら許されない業界なんじゃないかと言ったわけだが、元来言い出すと聞かない彼は会社を作った。それまでコツコツ貯めた貯金も全部吐き出して作ってしまったのだ。そんなことだから母さんも逃げたんだ、とか、まあ翻意するわけもないなか説得を試みたわけだが時間の無駄だった。
で、誘われた俺だがこの不景気の中、既に色よい返事を数社から受けていたこともあり、まあ仮に受けていなくても親父の余興に付き合うつもりは全く無かったのだった。で、親父が下手に動き出す前に決めてしまおうと特に考えもせず一番最初に内定貰った会社に絞って決めてしまったのだった。
で、二日後、内定は取り消された。親父に。動き出したら止まらないのだ。
彼の中では、俺は彼の作る先行き不透明な信号製造会社社員で確定しているわけで、他の会社に入るなどという選択肢は無いのだ。俺の選択肢を親父が消去する。母親が逃げた理由もわかりそうなものだと思うがどうだろう。
文句を言いに行った俺ではあるが、親父は聞く耳を持たず信号製造の未来を説く。まあ、簡単に言うと一社独占=競争が無い社会なのだから、上手い具合に差別化できれば、マーケットをごっそりいただくことが出来るというわけだ。そんなこと誰でも思いつくことで、それが未だに誰もやれてないってことはやっぱり参入できる市場じゃないとわかりそうなもんだが、暴走機関車みたいな親父は口角泡を飛ばして喋り続け、そして今回も俺はげんなりと諦めてその場を離れるのだった。
そして4月を向かえ、いつの間にやら借りた県庁所在地の隅っこにある古びたビルの一室で、これまた、どこからどのようにスカウトしてきたのかわからないおっさんとおばさんと若い男と女。俺と親父を入れて総勢六名いつ倒れるかもわからない会社ごっこが始まったのだった。
なにせ「差別化」がテーマの親父はたった一つの円卓に全員を集めて「アイディアを出せ」というわけだ。「どんなんでもいい」と。
「色変えたい。つまんない。」若い女が言う。
「ほほう」親父が反応した。「たしかに信号は赤・白・黄色だからね。」
「そりゃチューリップだろうが。」余計なツッコミをしたと後悔した。
親父が笑う。おっさんが笑っておばさんが笑った。若い男と女と俺が取り残される。
「いっそのこと、本当に赤・白・黄色」でどうかしら。ねえ。」
「白で進めか。」我が父よ、それでいいのか。
「赤・青・黄色をひっくり返しちゃうとかさ。」若い男が道路交通法を無視だ。
「青は止まれ、赤は進め?事故起きそうだな。」
「ついでに赤信号はハートマークにしちゃいましょうよ。」若い女が何かを越えた。
「点滅させたらドッキドキね。」おばさん、落ち着いてください。
「よし、それ目玉商品にしよう。」おっさん、あんたも落ち着け。
「賛成!」賛成すんな、この馬鹿親父。
っていうか、こんなばからしいことになんで前向きなんだ、お前ら。
俺の想いを無視して話し合いは続く。
「あたしは韓流がいいわ」おばさんはノリノリ(死語)だ。
「韓流?韓流って信号とどう結ぶんですか?」さすがの俺も聞かざるを得ない。
「え、わからないわ。」勢いか。
「信号機の下にテレビ付ければいいよ。」若いの。もっと頭を使え。
「なるほど。青信号になったらとっとと次の信号に行かないと続きが見れないのね。」おばさんがすっきりした顔して言う。
「それか誰も進まなかったりしてな。がははは」。親父。それでいいのか。親父よ。
「そうしたら交通渋滞になっちゃうから駄目ね。」いや、許されませんから。
「続きは次の信号で、とかしちゃえば。」若い男。
「みんなギュンギュン進むかもね!」若い女。
「賛成!」おっさん、黙れ。
「俺も!」この馬鹿親父。
そんなこんなで三日前に無理矢理会社を辞めた。
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イイネ、笑った。
それぞれのキャラが見える。
アメリカ兄弟より好きかな。
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